○川西市こども・若者参加条例
令和7年3月26日
条例第6号
(こども・わか者のメッセージ)
わたしたちこども・わか者は、一人ひとりがさまざまなこせいやのう力を持つ今を生きているそんざいであり、みらいへの大きなかのうせいをひめています。
わたしたちこども・わか者は、どのような理由があってもさべつされず、まわりのおとなからのあいじょうや思いやりの中で安心して毎日をくらすことができ、ゆめやきぼうを持ってせい長し、一人ひとりが思いえがく幸せをかなえることができるけんりを生まれながらに持っています。
また、みんなそれぞれ自分の意見や考えを持ち、それを自由に表明するけんりを持っています。
わたしたちこども・わか者が自分の意見や考えを表明するときは、次の6つの気持ちを大切にしてほしいです。
1つ目 きんちょうするときもあります。意見や考えをきくときには、やさしくあたたかい目で見て、うなずいたり相づちを打ったりしてほしいです。おこったりせず、親身になって、真けんにきいて、こたえてほしいです。
2つ目 まちがえることもあります。話をと中でさえぎらずに、さい後までしっかりときいてほしいです。ちがう意見や考えでも、頭ごなしにひ定しないでほしいです。
3つ目 つたえた意見や考えをむやみに他の人に言ったりしないでほしいです。ひみつにしてほしいとつたえたことを他の人に言うときには、きょかをとってほしいです。
4つ目 少数はの意見や考えに対しても耳をかたむけ、そん重し、受け止めてほしいです。
5つ目 つたえた意見や考えは大事にあつかってほしいです。そして、つたえた意見や考えがどうなったのかを教えてほしいです。
6つ目 安心して意見や考えをつたえることができるふんい気やかんきょうをつくってほしいです。
わたしたちこども・わか者は、心とからだのじょうたいや育ってきたかんきょう、今おかれているじょうきょうなどにより、自分の意見や考えをうまくつたえることができないときがあります。そんなときは急かさないで、ゆっくりと耳をかたむけ、よりそってください。
わたしたちこども・わか者が自分の意見や考えをつたえることは、ときにはゆう気がいりますが、自分のためやだれかのために意見や考えをつたえていきます。
わたしたちこども・わか者は、たがいの意見や考えをそん重し、わたしたちこども・わか者にとってもっともよいことをおとなといっしょに考えていきます。
(市の決意)
川西市は、こども・若者を対等なパートナーとして、こども・若者のみなさんからのメッセージをしっかりと受け止めます。
川西市は、平成10年に全国に先駆けて子どもの人権オンブズパーソン条例を制定し、児童の権利に関する条約の積極的な普及に努めるとともに、一人ひとりのこども・若者の人権を尊重し、確保するための取り組みを進めてきました。
おとなは、すべてのこども・若者が人間として尊ばれる社会を実現するために不断に努めなければなりません。
こども・若者は、発達に応じて、保護され、守られる権利があります。こども・若者は、発達の過程にあっても、生まれながらに権利の主体です。
川西市は、おとなの考えや意見だけで、こども・若者に関することを決めるのではなく、こども・若者一人ひとりが主体として、自らのことについて考え、意見を表明し、対話しながらともに決定することがこども・若者の幸せを実現するという視点に立ち、「こども・若者が幸せになるまちづくり」を進めます。
川西市は、すべてのこども・若者が、社会の一員として、家庭や学校、地域などの場で、自分に関わるあらゆることに気持ちや願い、意見を安心して、表明することができ、その意見が尊重され、こども・若者にとって最善の利益が図られるまちの実現をめざして、この条例を制定します。
(目的)
第1条 この条例は、児童の権利に関する条約、こども基本法(令和4年法律第77号)その他関連する法令等に基づき、全てのこども・若者の基本的人権が保障される社会の実現をめざして、こども・若者の意見表明・参加の機会を保障するため、市、育ち学ぶ施設、保護者、団体及び市民等の役割を明らかにするとともに、一人ひとりのこども・若者を真ん中において、市、育ち学ぶ施設、保護者、団体及び市民等が相互に協力することで、こども・若者が幸せに暮らし、笑顔あふれるこども・若者の成長を通してあらゆる市民が幸せを感じられるまちを実現することを目的とする。
(1) こども 18歳未満の全ての者その他これらの者と等しく権利を有すると認められる者をいう。
(2) 若者 18歳から29歳までの全ての者その他これらの者と等しく権利を有すると認められる者をいう。
(3) こども・若者 こども及び若者をいう。
(4) 意見 要望、賛否その他の他人に表明される意思であって、言語又は表情、身振りその他これらに類する言語によらない伝達手段により表現されたものをいう。
(5) 参加 自らに関係するあらゆる事柄について、その意義を十分に理解する機会を得て、意見表明等の活動に主体的に関与することをいう。
(6) 意見表明・参加の機会 意見を表明する機会並びにまちづくり及び多様な社会的活動に参加する機会をいう。
(7) 声を聴かれにくい状況にあるこども・若者 年齢、心身の発達状況、生活環境、社会環境等の理由により自らの意思を表明することに困難を有するこども・若者をいう。
(8) 市 市長、教育委員会、選挙管理委員会、監査委員、公平委員会、農業委員会、固定資産評価審査委員会及び消防長をいう。
(9) 育ち学ぶ施設 地域子育て支援拠点(児童福祉法(昭和22年法律第164号)に規定する地域子育て支援拠点事業を行う拠点をいう。)、保育所(同法に規定する保育所をいう。)、幼稚園(学校教育法(昭和22年法律第26号)に規定する幼稚園をいう。)、認定こども園(就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)に規定する認定こども園をいう。)、児童発達支援事業所(児童福祉法に規定する児童発達支援を行う事業所をいう。)、学校(学校教育法に規定する小学校、中学校、特別支援学校、高等学校及びその他の学校をいう。)、留守家庭児童育成クラブ(児童福祉法に規定する放課後児童健全育成事業を行う事業所をいう。)、放課後等デイサービス事業所(同法に規定する放課後等デイサービス事業を行う事業所をいう。)等こども・若者が育ち、学び、又は活動するために利用する施設をいう。
(10) 保護者 こども又は若者を現に養育する親その他親に代わりこども又は若者を現に養育する者をいう。
(11) 団体 共通の目的のために構成された組織であって、市民等が構成員として加わり活動するもの(専ら営利を目的とするものを除く。)をいう。
(12) 市民等 市内に在住、在勤又は在学する者及び市内で事業を営む者をいう。
(13) こども・若者施策 こども・若者に対する支援等を主たる目的とする施策及びこども・若者の生活に影響を与える施策をいう。
(基本理念)
第3条 こども・若者の意見表明・参加の機会を実現するための基本理念は、次のとおりとする。
(1) 全てのこども・若者は、生まれながらに人としての尊厳が守られ、幸せに生きるために必要な権利を保障され、思想、人種、国籍、障害の有無、性、家庭環境等いかなる理由においても差別されず、その基本的人権が保障されること。
(2) 全てのこども・若者は、虐待、体罰、いじめ等のあらゆる暴力から守られ、安全に安心して生きる権利・育つ権利を保障され、愛情をもって育まれ、一人ひとりの年齢及び発達段階に応じた生活が保障され、並びに教育を受ける機会、休息する機会、遊ぶ機会、スポーツ、芸術、自然等の多彩な活動に参加する機会が等しく確保され、健やかに成長し、発達する環境が保障されること。
(3) 全てのこども・若者は、生まれながらに意見表明の権利主体であり、多様な人格をもった一人の人間として尊重され、自分に関わることについて自由に意見を表明する機会が確保され、その意見はこども・若者の最善の利益を実現する観点から尊重されること。
(4) こども・若者に関することが決められ、行われるときは、こども・若者の立場から、こども・若者の現在及び将来における最善の利益が優先されること。
(こども・若者の意見表明権)
第4条 こども・若者は、自分の意見を自由に表明し、その意見を聴かれ、かつ、その意見が尊重される権利を有する。
2 こども・若者は、意見を表明するための前提となる情報提供を受ける権利を有する。
3 こども・若者は、自分の意見の表明を強要されず、表明したことによる不当な不利益を受けない。
(こども・若者の参加)
第5条 こども・若者は、まちづくり及び多様な社会的活動に参加することができる。
(市の責務)
第6条 市は、基本理念にのっとり、こども・若者の意見表明・参加の機会を保障するため、育ち学ぶ施設、保護者、団体、市民等、国、他の地方公共団体その他関係機関と連携し、必要な施策を推進するものとする。
(育ち学ぶ施設の役割)
第7条 育ち学ぶ施設は、こども・若者の健やかな成長に重要な役割を有することに鑑み、こども・若者の意見表明・参加の機会の意義、重要性等について十分に理解を深め、その機会を重んじて業務に当たるものとする。
2 育ち学ぶ施設は、市、保護者、団体及び市民等と協力し、こども・若者にその意見表明・参加の機会の意義、重要性等を理解できるように学びの機会の提供に努め、こども・若者のまちづくり及び多様な社会的活動への参加を支援するものとする。
(保護者の役割)
第8条 保護者は、こども・若者の意見表明・参加の機会の意義、重要性等についての理解を深め、こども・若者の年齢、成長等の状況に応じて、意見表明・参加の機会を保障するよう努めるものとする。
(団体の役割)
第9条 団体は、こども・若者の意見表明・参加の機会の意義、重要性等についての理解を深め、こども・若者が関わる活動又は事業に携わるときは、こども・若者から十分にその意見を聴取し、こども・若者の積極的な参加を促すよう努めるものとする。
(市民等の役割)
第10条 市民等は、こども・若者の意見表明・参加の機会の意義、重要性等についての理解を深め、家庭、地域、職場等において、こども・若者の年齢、成長等の状況に応じて、意見表明・参加の機会を保障するよう努めるものとする。
(保護者への支援)
第11条 市、育ち学ぶ施設、団体及び市民等は、保護者がこども・若者の権利の実現において果たす役割の重要性に鑑み、その役割を果たすことに困難を有する保護者を支援するよう努めるものとする。
(こども・若者施策等に関するこども・若者の意見の聴取及び反映)
第12条 市は、こども・若者施策を策定、実施及び評価するときは、施策の対象となるこども・若者の意見を幅広く聴取するものとし、こども・若者から聴取した意見(以下「こども・若者からの施策意見」という。)を、こども・若者の最善の利益を実現する観点から、施策へ反映するよう必要な措置を講ずるものとする。
2 市は、こども・若者に対し、こども・若者が意見を表明するための前提となる情報を確実に受け取ることができる機会を保障するものとする。この場合において、当該情報に用いる表現については、こども・若者の年齢、成長等の状況を勘案し、できる限り平易かつ簡明な表現を用いるものとする。
3 市は、こども・若者からの施策意見を施策へ反映させるよう努めるものとする。
4 市は、こども・若者からの施策意見の施策への反映状況をこども・若者に説明するものとする。この場合において、施策への反映状況についての説明の内容は、できる限り平易かつ簡明にするものとする。
5 市は、こども・若者が安心して意見を表明できるよう環境の整備に努めるものとする。
6 市は、育ち学ぶ施設その他こども・若者が利用する施設等を訪問する等の適宜の方法により、こども・若者からその意見を積極的に聴取するよう努めるものとする。
7 市は、こども・若者からの意見を随時聴取する窓口を明確に示して周知するものとする。
(声を聴かれにくい状況にあるこども・若者の意見の聴取及び反映)
第13条 市は、声を聴かれにくい状況にあるこども・若者について、その意思をくみ取り、かつ、必要に応じて意見を代弁する等必要な支援を行うよう努めるものとする。
(付属機関等におけるこども・若者の意見の聴取及び反映)
第14条 付属機関等(地方自治法(昭和22年法律第67号)第138条の4第3項の規定に基づき設置する審議会その他の付属機関及び市民等が参画して構成する組織をいう。以下同じ。)は、こども・若者施策その他こども・若者の意見を反映させることが適当な施策の調査、審査、審議等を行うときは、こども・若者が会議に出席する機会を設けることその他の方法によりこども・若者の多様な意見を聴取し、当該意見が調査、審査、審議等に反映されるよう努めるものとする。
2 市長その他付属機関等の委員を委嘱する権限を有する者は、こども・若者施策の調査、審査、審議等を行う付属機関等の委員の委嘱に当たっては、公募等によりこども・若者を当該委員として委嘱するよう努めなければならない。
(人材育成)
第15条 市は、こども・若者が参加しやすい安全かつ安心な場づくり並びにこども・若者の意見の形成及び表明を支援する人材の確保、養成等に必要な取組を推進するものとする。
(周知啓発)
第16条 市は、こども・若者の意見表明・参加の機会の意義、重要性等について、こども・若者、育ち学ぶ施設、保護者、団体及び市民等が理解を深められるよう、周知及び啓発を行うものとする。
2 育ち学ぶ施設は、自らの施設におけるこども・若者への意見聴取及びこども・若者の参加に関する取組について、広く周知するよう努めるものとする。
(推進体制)
第17条 市は、こども・若者の意見表明・参加の機会を保障するために必要な体制を整備するものとする。
(計画への反映及び実施)
第18条 市は、こども・若者施策に関する計画の策定及び推進に当たっては、第4条に規定する権利を実現するために必要な施策を反映し、及び実施するものとする。
(評価と検証)
第19条 川西市子ども・若者未来会議条例(平成25年川西市条例第18号)に基づき設置される川西市子ども・若者未来会議は、市が実施するこども・若者の意見表明・参加の機会に関する施策に対する評価及び検証を行うものとする。
(こども・若者の権利擁護及び救済)
第20条 本市内のこどもは、第4条に規定する権利について、川西市子どもの人権オンブズパーソン条例(平成10年川西市条例第24号)第10条第1項に規定する相談及び同条第2項に規定する擁護及び救済の申立てをすることができる。
2 こども・若者は、第4条に規定する権利について、市に相談し、並びに擁護及び救済の申立てをすることができる。
3 市は、前項の規定による相談並びに擁護及び救済の申立てがあった場合は、当該申立てに係る事情を聴取し、必要な措置を講じなければならない。
付則
この条例は、令和7年4月1日から施行する。